最小比は手に入った。次は本物の分子です。実験式から分子式を求める方法は短い一歩ですが、失点の多い ポイントでもあります。割り算1回、掛け算1回、そして丸めの落とし穴がいくつも。3つの完全例題(グルコース、カフェイン、 ベンゼン)とプロのエラーチェックで確実に押さえましょう。
乗数法の3手順
実験式からの分子式問題の全手順はカード1枚に収まります。
- 実験式量を計算する。実験式1単位の原子量を合計する。CH₂Oなら12.011+2(1.008)+15.999=30.026g/mol。
- nを求める。実験モル質量を実験式量で割る。n=モル質量÷実験式量。最も近い整数に丸める。
- 全添字にnを掛ける。CH₂O × 6 → C₆H₁₂O₆。時間制限下で忘れがちですが全元素に掛けます。
実験式からの分子式計算機は、パーセントやグラムと一緒に任意のモル質量欄を埋めれば3手順を自動実行します。
例題1:グルコース(定番)
実験式量=12.011+2.016+15.999=30.026g/mol
n=180.16 ÷ 30.026=6.00 → n=6
分子式=C1×6H2×6O1×6=C₆H₁₂O₆ ✅
例題2:カフェイン(多元素)
元素分析でC 49.48%、H 5.19%、N 28.85%、O 16.48%、モル質量194.19g/mol。まず実験式(C₄H₅N₂O。質量入力の実験式計算機で確認可)に約分し、拡大します。
n=194.19 ÷ 97.097=2.00 → n=2
分子式=C₈H₁₀N₄O₂ ✅(本物のカフェイン)
モルの概念が二役をこなす点に注目です。まず組成を比に変え、次に比を実験と一致すべき分子量に変える。両者が 一致すれば式が正しい強い証拠になります。
例題3:ベンゼン(比は1:1、分子は12原子)
実験式量CH=12.011+1.008=13.019g/mol
n=78.11 ÷ 13.019=6.00 → C₆H₆ ✅
ベンゼンは実験式だけでは誤解を招く好例です。CHは1:1の珍分子に見えますが、C₆H₆は有名な芳香環を表します。アセチレン (C₂H₂、n=2)も同じで、比は同じでも分子は別物です。
非整数のnの扱い
- 整数から約2%以内(例:5.96〜6.04)?丸める。モル質量測定の通常のばらつきです。
- 5〜10%ずれる?まず実験式を疑う。×2の分数乗数(Fe₂O₃型)の見落としがnを半分・倍にします。
- 大きく外れる(n=1.5)?分数分子は報告しない。原子量と、モル質量に水和水(・xH₂O)が含まれていないか再確認しましょう。
鉄則:nは正の整数でなければなりません。割り算が2.5になるなら、化学ではなく入力が間違っています。原子に半分はありません。
モル質量はどこから来る?
- 質量分析——分子イオンピークが直接質量を与える。ゴールドスタンダードです。
- 気体密度——揮発性化合物にはPV=nRTを変形したM=dRT/Pで。
- 束一的性質——溶液の凝固点降下や沸点上昇から。
どれもパーセントデータと組でパズルが完成します。実験式計算機(パーセント/グラム+モル質量)に 両方を入れれば、実験式・n・分子式が印刷用ワークシートで一気に出ます。
よくある質問
nが1になることはある?
しょっちゅうです。水・二酸化炭素・ホルムアルデヒドはn=1、つまり実験式そのものが分子式です。データが支持しない掛け算を無理にしないこと。
モル質量にも掛けるの?
いいえ。ありがちな間違いです。拡大するのは添字だけです。モル質量は割る側の固定目標です。実験式と分子式の比較の5化合物で確認してください。